Sunday, December 16, 2012

Apple退職しました

このたび三年余勤めましたApple inc.を退職しました。
AppleではiPhone4、iPad、OSX等、技術史に残るであろうプロダクトに開発チームの一員として参加し、刺激的かつ充実した日々を過ごすことができました。

Apple way
三年間の仕事を通じてAppleのやり方、考え方、いわゆるApple wayを理解することができたことは大きな収穫です。
僕にとってのAppleとは「海賊の巣窟」です。そのベースとなっているのは、広くはシリコンバレーの文化ではありますが、カウンター・カルチャーに発するパーソナル・コンピューティングの流れをくみ、(それが社内であっても社外であっても、誰であろうと)既存の価値を壊すことを良しとする考え方です。

ソフトウェアというものは大胆な変更が比較的楽なものですが、それをハードウェアでもどんどん革新していく、また安定性が重要なコンパイラ、OSカーネルなどのコンポーネントでもガンガン変更していく、というのは中々強烈でした。その分バグが多くなる、インテグレーションが大変ということが非常にしばしば発生しますが、その点を必要悪として許容してしまうあたり、割り切り具合が気に入っています。

社内にいる面々も基本的には海賊だらけなので、気を抜くとあっという間に血祭りにあげられてしまいます。入社まもない頃、向かいの部屋の女性が号泣しながら部屋に駆け込んでいったときは、どういう修羅の国かと思いました。
こんな世界のため、明日を生き抜くためには信頼出来る相手を見極めることが大事なスキルになります。ただし、人として信頼出来るかどうかは別にして、だれもかれもが一定水準以上の技量を持っている点は、大変恵まれていたかと思います(通常、人として信頼できるできないに合わせて、仕事が信頼出来るかどうかの見極めも必要になるものです)。

Appleの思い出
古い話になりますが、僕のAppleの思い出は20年くらい昔、自分がASCIIという出版社で編集アルバイトをしていたころにさかのぼります。当時幕張にあったAppleJapanでPowerPC搭載の新型Macの内覧会をするというので取材に出かけました(ちなみにそのとき同行させていただいたのがライターの後藤弘茂さんです)。プレゼンからして、いきなり通訳無しのハードコアさでしたが、とりわけ印象的だったのが当時目新しかったRenderwareを使ったOpenGLのデモです。ソフトウェア・レンダリングのシーングラフはとりあえず置いといて、スペースキーを押すたびにブタが発射されるというギミックがなんともシュールで、強烈な印象が今でも残っています。
なお、当時MS-DOS大好きだった自分は、PowerPC? フーン。。という感じで、その後Microsoftを通じてアメリカに渡るわけですが、それはまた別の話。

その後時を経てAppleで仕事をしようと思い立ったきっかけは、ショッピングモールでのできごとです。モールの店の外では子どもたちがゲームをしたりしながら暇をつぶしています。そこで女の子二人連れがiPod Touchでゲームをしているのを目撃した時、これはゲームの世界が変わると思いました。それまで子どもたちがモールで遊ぶゲーム機といえば、NintendoDSが王道であったわけですが、それが変わりつつある気配を感じました。
これをきっかけにし、面接では「iPhoneを世界一のゲームプラットフォームにしたい」と豪語してAppleに入社するに至ります。三年の時を経て、もはや子どもたちがショッピングモールで遊ぶゲーム機は殆どがiOS機器になりました。これを以って、この目標については、まあ80%達成ということでギリギリ合格としたいです。

明日から
三年間の間、うまくいったこと、いかなかったことを繰り返しながらも上司やチームメイトに恵まれ、充実した日々を過ごしてきました。現職を去るのは名残惜しいですが、全てに心残りなく、ひと通りやりたかったことを終えたいま、新しい困難に身を投じる良いタイミングであると思っています。
Appleのカンファレンスセンターの正面には、故Steve Jobsの言葉がデカデカ掲げられています。
"if you do something and it turns out pretty good, then you should go do something else wonderful, not dwell on it for too long. Just figure out what's next." 「ひとつうまくいったら さっさと次にかかれ、こら」的な意味ですが、これに従い、ひとまずApple生活を終えることにしました。

明日からは、同じくシリコンバレー、Mt.ViewにあるGoogle社での仕事を始めます。引き続きゲームに関係ある仕事になる予定ですので、各位、引き続きよろしくお願いします。
真の冒険者であれば、いかしたHW系のスタートアップに行くのが良いと思うのですが、ここで安牌を切ってしまうあたり、リスクテイカー足り得ない自分の限界です。精進あるのみですね。

余談ですが、長年暖めていた「私的グランドスラム計画」、ソフトウェア(Microsoft)、ハードウェア(Apple、そしてSEGA)、サービス(Google)を主力とする会社それぞれで働いてみる、という計画がこれをもって達成できた点、ささやかな喜びでもあります。

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